フランス映画祭2006

フランス映画祭が今年から横浜から東京は六本木とお台場そして大阪に場所を変えて3月に開催されることになりました。

最近はめっきりフランスの新作の公開作が注目されてませんが、今回の上映作品の中で昨年私がパリ滞在中に見たものが幾つかあるのですが、特に良かったのはセザール賞にも多数ノミネートされたステファヌ・ブリゼ監督『愛されるためにここにいる訳じゃない』Je ne suis pas là pour être aimé 。ブリゼ監督は日本では全く知られてませんが、ブチきれた婦警が無謀にも歌手転身しようとする99年の長篇デビュー作『La bleu des villes』もいい作品だったので、間髪なく見る事にしたのですが、やっぱりパリの映画界でも注目の人物なようで、派手な公開ではなかったもののサンタンドレ・デザール通りRue Saint-André-des-Arts のアート系の劇場が長めの上映を敢行し、週一ペース上映のカルト系劇場でも早くも選ばれた程たりして評判となり、拡大公開に広がった。今回は男性版『La bleu des villes』とも言えるもので、しがない税務署員がタンゴ教室に通って... (『Shall we ダンス?』風)。主演は『読書する女』ぐらいしか日本では知られていないけど、演劇界では高い評価を得ている名優パトリック・シェネで、共演はピーター・ブルックの『桜の園』の公演やマノエル・ド・オリヴェイラの『繻子の靴』にも出ていたアンヌ・コンシニー。日本での公開は期待できないかと思いきや、セテラ・インターナショナルの配給でお正月に『愛されるために、ここにいる』とタイトルを変えて公開が決まりました。こういういい感じの作品を見ておくとフランスの新作も捨てたものじゃないと思うでしょう。

もう一本は、コリーヌ・セローの「サンティアゴ...メッカ」St Jacques... La Mecque。絶縁していた三人の兄弟姉が遺産分配を受ける条件としてサンティアゴの巡礼するよう言われ、喧嘩しながらそれを敢行する内に、他の参加者たちとの交流やトラブルを経てわだかまりを解き、成長する過程を美しい自然を背景に描いた爆笑あり、感動ありのセローらしい作品。 全く日本では知名度のないけど、スタンダップ・コメディや舞台演出で人気者のミュリエル・ロバンの初主演で、他にアルチュス・ド・ペンゲルヌ、ジャン=ピエール・ダルサン、パスカル・レジティミュス、マリー・ビュネル、アラブ移民の文字の書けない少年役を好演してセザール候補となったアイメン・サイディと、それぞれキャラが立っていて魅力的。コメディ・フランセーズの正会員ロラン・ストッケールが笑える役で登場するのも見逃せない。 これまた、その後配給が決まり、公開予定です。

笑えると言えばヴァレリー・ルメルシエ監督主演作『パレ・ロワイヤル!』Palais Royale !
ひょんなことで王国の女王になった女性のてん末で、ダイアナ妃やグレース・ケリーとその娘カロリーヌといった王妃たちのスキャンダルや悲劇を上手く混ぜあわせてヤバい所をすり抜けて笑いに昇華させている。カトリーヌ・ドヌーヴの女王というのも恐く、チャールズ風な浮気な夫をランベール・ウィルソン、浮気相手で彼女の親友をマチルド・セニェという配役もハマっている。ルメルシエはサシャ・ギトリの『カドリーユ』のリメイクを撮った人だけに笑いのつぼやセンスがある人である。

『戦場のアリア』はアカデミー賞の外国語映画賞候補ともなったあま〜い反戦映画。戦場でアリアは歌われません。歌われるのはクリスマス・ソングです。原題も「Joyeux Noël」つまり「メリー・クリスマス」。戦場に行ったテノール歌手の夫を追って妻でソプラノ歌手が戦地に赴き、クリスマス・イヴは休戦して歌を歌って酒を酌み交わす。オペラ上演のシーンでは映画用にフィリップ・ロンビが書き下ろしたアリアが流れます。歌の吹替えはナタリー・デセイ(ドゥセ)とロランド・ヴィラゾン(ビリャソン)。サントラに付いているメイキングDVDは面白いです。

残念なのは、パトリス・シェローの「Gabrielle」が入らなかった事。非常に緊張感のある力強く美しい作品であるのだが。「カイエ・デュ・シネマ週間」では上映されたけどシネフィルとか関係なく普通に見てもらいたかったのがグザヴィエ・ボヴォワの『若き警官』でしたが...。