第24回 ダン・ドゥリエイ生誕100年
ダン・ドゥリエイは、ダン・ドゥリエ、ダン・デュリエなどの日本語表記で知られる立川談志師匠もひいきにする性格俳優。1907年1月23日生まれなので今年は生誕100年にあたる。ダン・ドゥリエイ主演の映画はすべて日本未公開だが、とりわけ「第18回」で紹介した、コーネル・ウルリッチ原作、ロイ・ウィリアム・ニール製作・監督の『黒い天使』(未。1946)は有名。台本、セット美術、撮影、演技もどれも低予算ながら素晴らしい。特にブロンドのB級女優ジューン・ヴィンセント(1920年、オハイオ州ハロッズ生まれ)は魅力的。彼女の歌も聴ける。
殺される人気歌手役のコンスタンス・ダウリング(1920−69)は、ダニー・ケイのデビュー作『ダニー・ケイの新兵さん』(1943)に出ている。既婚者のエリア・カザンと交際していたこともあるが、1950年にイタリアの作家チェーザレ・パヴェーゼ(1908−50)が自殺する直前に付き合っていたが彼を振ったことで知られる。彼の最後の10篇の詩群「死が訪れ君の眼を持つだろう」は彼女に捧げられている。『失われた週末』(1945)、『青い戦慄』(1946)に出演している妹のドリス・ダウリング(1923−2004)と共に、1947年にローマに移住し、イタリアに活動拠点を移した初のハリウッド女優となった。パヴェーゼと知り合ったのは1950年のローマでの新年パーティ。パヴェーゼはコンスタンス姉妹のためにいくつかの映画の原案を書いた。ドリスはイタリア映画の名作『にがい米』(1949。監督ジュゼッペ・デ・サンティス)でヴィットリオ・ガスマン、シルヴァーナ・マンガノと共演している。また『オーソン・ウェルズのオセロ』(1952)では娼婦ビアンカ役を演じている。
コーネル・ウルリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)原作の40年代映画には、他に以下がある。『チャンスの街』(未。1942。監督ジャック・ハイヴリー、原作『黒いカーテン』)、『レオパルド・マン』(DVD題。1943。監督ジャック・ターナー、原作『黒いアリバイ』)、『幻の女』(1944。監督ロバート・シオドマク)、『口笛男の痕跡』(未。1944。監督ウィリアム・キャッスル、原作『睡眠口座』)、『タイムリミット25時』(ビデオ題。1946。監督ハロルド・クラーマン、原作『暁の死線』)、『追跡』(未。1946。監督アーサー・リプレイ、原作『恐怖の冥路』)、『カモ』(未。1947。監督レジナルド・ル・ボーグ、原作『コカイン』)、『有罪』(未。1947。監督ジョン・ラインハート、原作『殺しのにおいがする』)、『夜の恐怖』(未。1947。監督マックスウェル・シェイン、原作『悪夢』)、『口笛男の帰還』(未。1948。監督D・ロス・レダーマン、原作『突然アリスは消えた』)、『靴』(未。1948。監督ウィリアム・ナイ)、『夜は千の眼を持つ』(1948。監督ジョン・ファロウ)、『窓』(1949。監督テッド・テズラフ、原作『非常階段』)。このうち最大のヒット作『窓』のDVDがフランスのエディシオン・モンパルナスから2006年10月2日に出た。監督のテズラフはミリアム・ホプキンスの撮影監督として知られ、彼女の当たり役となった『襤褸と宝石』(1936)の撮影監督などを務めている。
紀伊國屋書店から2月24日にDVDが出る『M』(1931。監督フリッツ・ラング)のシーモア・ネーベンツァル製作、フィリップ・ヨーダン脚本、ロバート・カミングス、ペーター・ロレ主演の『追跡』はVCIから『死後の私を葬って』(未。1947。監督バーナード・ヴォーハウス)と共に『フィルム・ノワール2本立て、第2巻』と題するDVDが出ている。『追跡』は今も観賞に耐えるカルト的秀作だが、『死後の私を葬って』はジョン・オルトンの撮影ながらやや冗漫。ちなみに『フィルム・ノワール2本立て、第1巻』は、『足をひきずる男』(未。1953。監督サイ・エンドフィールド)と『うつろな勝利』(未。1948。監督スティーヴ・シークリー、撮影ジョン・オルトン)を収録。『うつろな勝利』はポール・ヘンリードと『扉の影の秘密』(1948。監督フリッツ・ラング)のジョーン・ベネット。『追跡』のDVDはアルファ・ヴィデオからも出ている。
アルファからは『夜の恐怖』のDVDも出ている。これは『スタートレック』シリーズのドクター・マッコイ役で知られるデフォレスト・ケリーの映画初出演作。監督のマックスウェル・シェインはこの映画を『悪夢の殺人者』(放映題。1956)としてリメイク。リメイク版の主演はエドワード・G・ロビンソンとケヴィン・マッカーシー。撮影はジョーゼフ・バイロック。
コーネル・ウルリッチの小説とフィルム・ノワールに関してはトマス・C・レンツィ著『パルプ・フィクションからフィルム・ノワールまでのコーネル・ウルリッチ』(McFarland,2006)を参照。
高名な映画批評家アンドルー・サリスは『黒い天使』をお気に入りの犯罪ミステリ映画10選に入れている。
アンドルー・サリスのお気に入りの犯罪ミステリ映画10選(原題アルファベット順)
- 『シャーロック・ホームズの冒険』(未。1939。監督アルフレッド・L・ワーカー)
- 『そして誰もいなくなった』(1945。監督ルネ・クレール)
- 『黒い天使』(未。1946。監督ロイ・ウィリアム・ニール)
- 『チャイナタウン』(1974。監督ロマン・ポランスキ)
- 『青の恐怖』(1946。監督シドニー・ギリアット)
- 『ローラ殺人事件』(1944。監督オトー・プレミンジャー)
- 『マルタの鷹』(1941。監督ジョン・ヒューストン)
- 『舞台恐怖症』(1950。監督アルフレッド・ヒッチコック)
- 『影なき男』(1934。監督W・S・ヴァン・ダイク)
- 『トワイライト』(ビデオ題。1998。監督ロバート・ベントン)
『黒い天使』米ユニヴァーサル盤DVD (レヴュー dvdbeaver.com / dvdtalk.com)