放映録画鑑賞メモ「犯人に告ぐ」「危険な英雄」

WOWOW制作の新作映画ですが劇場公開前に一度だけオンエアーするという試みでハイビジョン版「犯人は告ぐ」を見たのですが、釈然とせず鈴木英夫「危険な英雄」を続けて見たところ題材が似ていました。

ともに誘拐犯(「犯人に告ぐ」は愉快犯も)と警察の攻防にマスメディアが絡んで複雑になってくるというお話です。「犯人に告ぐ」は生放送のニュース番組で捜査中の刑事がカメラ目線で犯人を挑発するという展開。「危険な英雄」は新聞記者が警察情報を盗んでスクープ記事にして、結局は犯人を追いつめるという展開。後者のラストはこれが悲惨な結果を導きだしてしまうのですが、前者では捜査が進展し、市民も協力するというお話です。
「犯人に告ぐ」のテレビメディアの描き方はあまりにも薄っぺらで、お気楽な感じです。そもそもあんな挑発を続けて犯人が次の犯罪を起こすことは全く忘れてしまっているようです。視聴率のためにテレビ側もそうした警察のやり方を利用するという話であるならば、次の犯罪が起こってしまうという物語展開にしても面白かったのではないでしょうか?テレビ局制作の作品ですから、テレビに責任がおよんでくるような物語は無理ということか、単に原作、脚本が甘いのか。「犯人に告ぐ」ということですが、「お前の言う理想の社会とは何だ」とか何とか言う肝心の刑事の言葉に力がないのは致命的。生放送のテレビを利用した犯人との攻防がはじまるのかとおもいきや、そういうことはないです。いわばサスペンスというものがないです。映画として、という以前に物語として腑に落ちなくて乗れない、というのが昨今多いようですが、これも一例ということでしょうか。たとえば、こんな捜査をしている刑事の子供を保護していないし、当人たちも危機を感じているという場面がないという設定はありえないのでは。たとえばイーストウッドならまず、そこは手をうってからテレビに出るでしょ、でも離婚した奥さんは誘拐される、んじゃないでしょうか。
そこで「危険な英雄」ですが、こっちのほうが断然面白いわけです。誘拐事件は最悪の結果に終わるのですが、この映画は、自らの取材が最悪の結果を招いたということが、会社のせいだ、と開き直って全く懲りない主人公像で締めくくっています。いわばひとつの社会批判もこめた物語としてきちんと成立しています。そのラストにいたるまでの展開も、警察の捜査と記者の取材の攻防という視点からサスペンスを生み出しています。新聞少年にモンタージュ写真を配って捜査協力させる、というくだりもめちゃくちゃですが面白いです。
台詞を徹底して早口で棒読みさせて、現都知事が主演という問題をクリアしているところからしてさすがというべきでしょうか。ただ共演者が、小澤栄太郎、仲代達矢、志村喬という面々ですから多少だめでも画面は持つのですが。お目当ての司葉子はほれぼれする美貌ですが、ちょこっとしかでてこないのですな。主演へのビンタは壮快です。
「犯人は告ぐ」は主演の豊川悦司がいいので、50分ぐらいは見せてくれますが、映画としての成立させかたをもっと考える必要があったのではないでしょうか。画づくりにしても冒頭の誘拐犯が現れるのを待ち伏せするシーンなどカットが軽すぎです。HD撮影でHD画面を想定しているのでしょうが、劇場で冒頭からこんなカット割り見たくないです。速いカット割りでゆくならサスペンスを盛り上げられる厳密なコンテが必要ではないでしょうか。
余計なことですが、この新作をまずオンエアーして、その告知と口コミで劇場宣伝に、というねらいなのかもしれませんが、とても興行のプラスに作用するとは思えません。昔角川映画は本編がつまらないのを何とか宣伝で面白くみせるため試写はあえて見せない、という手を使っていましたが、そっちのほうがよかったんじゃないでしょうか。録画した映画はハードディスクの負担を軽減するため速攻消去しました。(って何か嫌な感じだけど、実際いま映画はこんな感じでお手軽に扱われているわけですね)

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