DVD鑑賞メモ 「シャイアン」「They made me criminal」
30年代ハリウッドという一応のテーマからずれますが、またまた米ワーナーのフォードBOXから「シャイアン」でフォード補給します。
70MM スーパーパナビジョンによる撮影ということもこの画質を左右する決めてとなっているのでしょうが、これはただならぬカラー映像です。「捜索者」のブルーレイディスクもすごいのですが、DVDでもこれだけ抜けがよくて、鮮明感にあふれ、発色感に富んだ映像は初めてといってもいいかもしれません。とにかくワイド画面の見応えに、シーンごとに、息をのむ、といっても過言ではないでしょう。つまりは、この映画自体が、現代の業界人にこれだけのマスターをつくらせるだけの力にみなぎった画面に満ちているということでしょうか。
フォード演出はワイドショットでの風景を入れ込んだ画面づくりに賭けているような気もします。そのせいか約2時間半の長尺がゆったりと感じられます。30年代フォード映画のシャープな流れはなく、画面に流れが止まっています。ただその画面がすごいので、見入ってしまいますので、これはこれですごいです。黒澤の後期とちょっと似ているのでしょうか。シャイアン族たちも米軍たちも、広大な大地をとにかく延々と進んでゆく、その感じのすごいこと。
途中、物語の本線とはあまり関係なさげに、ワイアット・アープ役でジェームズ・スチュアート、ジョン・キャラダインが登場するダッジ・シティの酒場シーンがありますが、このあたりがフォードの遊びでしょうか、緊張感に満ちた映画が一度緩んでいい感じです。街中に汽車が通過する見せ場もあります。ひつこいようですが、ほかにも火を吹きながら走る汽車や全速力で走る大騎兵隊団を移動で追ったテクニカラーワイド画面など、スペクタキュラーな見せ場がたくさんあります。役者もみんな無難にいいですが、エドワード・G・ロビンソンがすべてをかっさらってゆくような思いのこもった芝居を見せてくれます。
特典で「シャイアンの秋を追って」という短編のプロモーション映画?がついているのですが、見応えがあります。現代のシャイアン族の末裔がこの映画に描かれている道程を、車で旅するという趣向なのですが、カラースタンダードで丁寧に撮影された画面がまるでフォード映画のようなところもあり、美しいです。また、こういうのを見ると制作された当時のマイノリティの権利や保護を見直そうとしていたアメリカの世相がはっきりします。
「捜索者」でインディアンを図式的に悪者あつかいにしたり、この映画では彼らに同情的な物語を展開したりと、フォードって人も大変ですね。それにしても「静かなる男」を例外とした戦後のフォード映画には、戦闘や闘いに対するなにか暗いもの、いわば深い反省があるような気がします。
30年代ものに戻ってバズビー・バークレイ監督の「They made me criminal」を米アルファ版(960円ぐらい)で。パブリックドメインものでワーナーの正規版ではないのですが、画質はそんなにひどくないです。16mmではなく35mm素材を使っているようです。(ところが同時に取り寄せたこの会社の他の2、3枚は16mmかへたすれば8mm、しかもVHSマスター疑惑のひどいしろものでした。これだけ例外的にいいのかも?)
ジョン・ガーフィールドが殺人の濡衣をきせられ逃亡するボクサー役、です。まよいこんだ農園で「デッドエンド・キッズ」なる芸名の悪ガキ集団と出会い、彼らや農園の娘との親交をふかめてゆく、という展開ですが、あしたのジョーというか梶原一樹的な、よくいえばダイナミックな、悪くいえばいきあたりばったりな強引な展開が面白いです。農業用の貯水タンクのなかで悪ガキたちと泳いでいたら、水がどんどん減ってきて出られなくなり、カナズチの子はパニックに、なんてシーンがすごく面白いです。全編いわば、台詞がわからなくても楽しめるように、見せてわからせる、さすがバズビー御大です。ガーフールドを追っかけて来る刑事がクロード・レインズで、ラストはカサブランカのようなオチなのも期待どおりです!
力を抜いて見て普通に面白く後味も爽やか。こんな映画はやっぱりうれしいです。

Faux
Alpha Videoは珍しいタイトルを商品化してくれるのでありがたいのですが、画質等にはバラツキがあり、相当難がある場合もあるので、要注意です。
『They Made Me A Criminal』は、バズビー・バークレイのミュージカル以外の唯一の監督作。バークレイ監督のルーニー&ガーランドものBOXについては、「編集室より」DVD鑑賞メモ 「泥酔夢」「フットライト・パレード」のコメント参照。
ジョン・ガーフィールドはこれが初主演作。撮影は『ボディ・アンド・ソウル Body and Soul』(47)で再びボクサー役のガーフィールドを撮ることになるジェイムズ・ウォン・ハウ。貯水槽でガーフィールドが溺れそうになる場面は印象的でした。
この映画は以下でも観られます。
http://www.archive.org/details/They_Made_Me_A_Criminal_1939
この話の原型は、Pre-code期に、Warnerがダグラス・フェアバンクス・ジュニア、ロレッタ・ヤング主演で『男の一頁 The Life of Jimmy Dolan』(33。アーチー・L・メイヨ)として映画化。撮影は「編集室より」DVD鑑賞メモ13 「我れ暁に死す」のコメントに書いた『魔の家』(32)のアーサー・エディソン。ジョン・ウェインも出ています。
『シャイアン』(64)は、『アイアン・ホース』(24)や『3悪人』(26)に主演したジョージ・オブライエン(1899-1985)の最後の映画出演作。『国民の創生』(15)、『イントレランス』(16)のメイ・マーシュ(1895-1968)も端役ながら『シャイアン』が遺作。「編集室より」DVD&放映録画 鑑賞メモ3「モホークの太鼓」ほかのコメントも参照。
2007年06月27日 10:08
可児義教
[シャイアン]は、なんとしても完全な形で観たい。これくらい誤解されている作品はない。[ダンス・ウイズ・ウルブス]なんかがオスカー取ったのは、ぶじよくだ。
2007年09月20日 12:49