DVD鑑賞メモ 「私は告白する」「間違えられた男」
日本版ワーナー版(セールでたしか1000円以下!!)で50年代ヒッチコックの2本を。
どちらも見事なマスターでまずは画面の美しさに目を奪われます。どちらも、誠に実に恥ずかしながら、初見です。VHSで見るのは嫌だった、というのが表向き?な理由ですが、どうもどちらもあまりお色気がなさそうで、敬遠していたというのが正直なところ。
「私は告白する」は「ゴダールの決別」でもTV画面にうつる映像に引用されていて、たしか「私は告白する」のフランス語タイトルが「沈黙の掟」なのは妥当だ、という台詞があったはず。そのフランス語なまりの「アイ・コンフェス」という女性の声が妙に印象に残っています。
モンゴメリー・クリフトが抜群にいいですね。特典の解説映像のなかで、ヒッチコックのあっち見てこっち見て、といった演出に“メソッド演技“のクリフトはかなりとまどったということが紹介されていますが、そのとまどいがまさに登場人物の複雑な心理をかもし出していると、いうと変でしょうか。ピーター・ボグダノビッチがバイト先の名画座でこの映画をふらっと見に来たクリフトに「これをご覧になるお気持ちは?」とたずねたところ、「ひどいよ」と言ったそうです。かわいそうなクリフト。公開当時、国内の反応がかんばしくなかったらしいですが、みんなもっと褒めてあげればよかったのに。
舞台がカナダというのも、味があります。ラストのホテル、まだ残ってたら行ってみたいです。クリフトが苦悩して町中をうろうろさまようシーンもロケーションなのですが、すごく効果的です。教会の窓枠?にほどこされた十字架を背負うイエスの像ごしに、さまようクリフトをとらえた長いカットが印象的です。この罪を背負う男のイメージっていうのは、やっぱりキリストと結びついているんですね。
その罪を背負ってしまう男をもっとわかりやすくしたのが、「間違えられた男」です。
ヘンリー・フォンダってこういう不幸な男が抜群に似合います。しかし、このベースプレーヤー役、ちょっと潔癖すぎるところが、この映画の弱点でもあります。ちょっとうしろめたいことがあれば、サスペンスも盛り上がるような気もしますが、この映画はそっちではなく奥さんの心理のほうへいくんですね。特典の映像解説ではちょっとでも夫を疑ってしまった罪悪感が心を閉ざした、というようなことを行っていますが、そうとは見えなかったです。そういう説明が一番納得いくのですが、アリバイ調査の途中で、あまりに突然おかしくなるんで、奥さん実は不倫してたのか、という展開を妄想してしまいました。
取り調べ室、留置所、裁判所、拘置所の描写に力が入ってます。ヒッチコックにとって、やっぱり一番恐い場所、なんですね。こうなれば、ついでに刑務所まで、やっていただきたかったです。でもそれは嫌なんでしょうね。実話のリアリズム演出をささえるオールロケーション、とおもっていたら、特典で美術監督がセットのリアリティにこだわった、と言っているので驚き。
この映画でも十字架のイメージがちりばめられていますね。考えてみれば、十字架ってそれこそ恐いもんね。手、足に釘だもん。小生も幼稚園で初めてあの像をみて、ふるえるほどぞっとして泣き出したことを忘れられません。
それはさておき、ヒッチコックとキリスト教。考えてもみなかったことでした。この二本を見といてよかったです。

Faux
『間違えられた男』(56)の原作・脚本はマックスウェル・アンダーソン。アンダーソンのことは、「編集室より」DVD&放映録画鑑賞メモその8「メアリー・オブ・スコットランド」のコメントに書きました。
最近、ウィリアム・マーチ原作、アンダーソンが脚色した『悪い種子(たね)』(56。マーヴィン・ルロイ)を廉価盤DVDで観ましたが、これはフランソワ・トリュフォーも言うとおりの凡作でした。舞台の芝居をそのまま撮ってるだけだし、サスペンスが台無し。
『悪い種子』同様、矯正不能な生まれながらの悪人という主題を扱った、ローレンス・ティアニー主演、マックス・ノセック監督のB級犯罪劇『極道 The Hoodlum』(51)を観ました。これは、同じコンビの『犯罪王ディリンジャ』(45)ほど聡明な活劇ではなく、根っからの極道は矯正不能という偏見にのっとり、強引に話を展開するという点はいかがわしいものの、B級映画の思想としてはむしろ正当で、盛り沢山の挿話を61分に凝縮するタイトな話術は心地よい。「極道」役ローレンス・ティアニーの実弟エドワード・ティアニーも極道の弟の善人役で出ています。さすがにサブキャラの描写は薄いです。
「世界映画DVD発見」第27回で紹介済みの、シドニー・ポワチエ主演、ヒューバート・コーンフィールド監督の『圧点 Pressure Point』(62)では、ボビー・ダーリン扮する狂信的ナチの青年は黒人とユダヤ人を異常に憎んでいます。ポワチエは刑務所の精神科医で彼の治療を任されるのですが、こちらは後天的な生活環境の要因により、あまりに屈折した青年は健全な精神を取り戻すことができません。ポワチエが医師の役でデビューした、マンキーウィッツ監督の『復讐鬼』(50)の復讐鬼リチャード・ウィドマークをも思わせます。ポワチエの演技は真面目すぎるかも。
2007年06月24日 00:36