DVD鑑賞メモ11 「西部戦線異状なし」「怒りの葡萄」「荒野の決闘」二枚組
「30年代ハリウッド」というこだわりに戻って、この有名作を日本のユニバーサル正規版にて。フィルム原版がよほどひどいのか、もしくは一世代前のビデオマスターをつかっているのか、傷パラが激しく、鮮明感にも乏しいです。
冒頭イギリスの映倫?マークがでてくることから、アメリカ原版ではなくイギリス公開版の原版を使用しているようです。第3回アカデミー作品・監督賞受賞作ですが、オリジナルネガがない、ということもあるんでしょうか。
誠に恥ずかしながら、初めて見ました。見終わって、これを見ないで戦争映画うんぬんいって、とさらに恥ずかしくなりました。兵士になること、戦場へいくこと、そこで震えること、苦しむことが身にしみて、ほとんど皮膚感覚のレベルまで伝わってくるようです。ことに砲撃、爆発、銃撃の音が、断続的に低く響き、こちらの神経を苛立たせ、これが映画の展開と相まって、戦場の臨場感、登場人物たちの疲労感、をひきたたせます。モノラルのしかも録音状態の悪いトーキー初期にあって、この効果はすごいです。逆に最近の多チャンネルの効果音はクリアで鮮明ですが、妙にきれいなのかもしれません。というのも、これを見ながら「硫黄島からの手紙」のことを思いださずにはいられなかったらです。あの映画に期待していたものが、ここにはありました。つまり兵士たちがまず、食べられないで苦しみ震えぼろぼろに疲弊してゆくことをきっちり描いているのです。その描写に賭けたエネルギーが物量も含めで凄まじいのです。
これもアメリカにとって敵国のドイツ人側のお話、という共通点もあるのですが、こちらはあくまでも兵士の視点が貫かれていて、子供に手紙を書く余地のある司令室という安全地帯にいる司令官の話ではありません。「父親たちの星条旗」や「プライベート・ライアン」やその他の何とか作戦ものの戦争映画にしても、銃撃の嵐のなかを必死で進撃するという描写にはどこか幼稚なヒロイズムがあるのではないでしょうか。この作品のすごいことは、何一つ進まず、疲れるだけという停滞した戦場描写に徹していることです。だから爆撃して倒れる兵士の痛みすら、感じるのです。もちろん現実の西部戦線の状態がそうであったのでしょうが、硫黄島の洞穴にこもった日本軍兵士も同じ感情だったのでしょうし、イーストウッドにはその感情を描いてほしかったです。
飢えの感覚ということで、もうひとつ。
大恐慌で土地をおわれた農民たちがカリフォルニアに移住するも仕事はなく、
あっても食べられない賃金で酷使され、とにかくひどい目にあるという「怒りの葡萄」をフォックスの日本版で。これはだいぶ前に見ていたのですが、全く忘れているので、驚きです。それとも見た気になっていただけかもしれません。
いずれにしても恥ずかしい。
ヘンリー・フォンダがあまり好きではないのですが、これはいいですね。
もちろん彼の代表作のひとつでしょうが、母親のリンダ・ダーネルがいいからかもしれませんが、彼女との芝居でいい顔をしてます。ようやくたどり着いた国営キャンプのダンスパーティーで母と踊って歌を歌ったりするところやラスト前の目の輝きは否定できません。それしてもフォードはダンスや歌が好きですね。緊張した物語のなかのこうした間がいいですね。そういえば「荒野の決闘」2枚組についていた「未公開版」をチェックしてわかったのですが、製作者ザナックがカットを命じた部分というのは、こうした間の部分なんです。
駅馬車が到着する前、町のひとと語らいながら、テラス?に椅子を用意するワイアット・アープや、「オースザンナ」を歌いながら旅行く人々、のシーンをカットぜすにそのままいっていれば、緊迫感のなかのユーモアが生まれて、フォードらしさが出たでしょうし、ラスト、アープがクレメンタインの頬にキスするカットに意外な感じをもたなくてもよかったわけです。
映画ってちょっとしたことが、大きく印象を変えるんですね。
「怒りの葡萄」は、貧しいことの描写力が素晴らしいです。家族が移動する家財道具と人員オーバーでへこんで走るトラックもそうですが、避難所?キャンプ地にいったときのゆったりとした主観カメラで見せるキャンプの風景、人々の表情が、本物らしき臨場感です。登場人物も、ただでさえ細身のジョン・キャラダインがさらに痩せこけて、自信をなくした司祭を演じて、リアリティ抜群です。主人公のジュードが仮釈放で帰宅したときに、よくぞ脱獄してきた、とはしゃぐおじいさんのような破天荒キャラは、次の「タバコ・ロード」で開花するのですね。

Faux
『西部戦線異状なし』(30)は、エーリヒ・マリア・レマルク(1898-1970)の原作(29)で、同じレマルク原作の『愛する時と死する時』
(54。ダグラス・サーク)を思わせたりもするのですが、『西部戦線異状なし』の脚色は、『メアリー・オブ・スコットランド』(36)のマックスウェル・アンダーソン(1888-1954)です。
アンダーソンの第一大戦劇といえば、『栄光』(26)とそのリメイク『栄光何するものぞ』(52)の原作戯曲(24)が有名です。ジョン・フ
ォードは『栄光』の一部ショットを演出したといわれています。
『栄光』の舞台となるのは、フランスの前線ですが、撮影はウエスト・ロサンジェルスのフォックス・ランチで行なわれました。1926年11月23日、ニューヨーク、プレミア上映。1927年にサウンド版として再公開。日本公開は1927年9月15日。日本公開版は検閲により大幅カットされたそうです。
ドイツ、バイエルン地方の母親と四人の息子の物語を扱った、フォードの『四人の息子』(27)にも、『サンライズ』(27)でジョージ・オブライエンがマーガレット・リヴィングストンと密会する場面のセットを転用した第一次大戦の戦場場面が出てきます。1927年秋に主要撮影の始まる前に、フォードは妻メアリと2か月の欧州旅行に行き、ムルナウから直接指導を受けました。『四人の息子』のニューヨーク、プレミア上映は1928年2月13日。日本公開は1928年10月19日。米国ではサウンド版で公開されましたが、日本公開版は無声版。
2007年05月22日 00:23
Faux
ジョージ・キューカーは『西部戦線異状なし』(30)のダイアローグ・コーチを務め、3本の共同監督作を経て、『心を汚されし女』(31)で単独監督デビューしていますが、彼の初期監督作のDVDを紹介します。
『若草物語』(33)は国内盤がソニーから2月16日発売。500円盤もあり。「編集室より」の「DVD鑑賞メモ 9 「バッファロー大隊」」のコメントにも書いた『晩餐八時』(33)は北米Warnerから2005年に発売。
コンスタンス・ベネット主演の『栄光のハリウッド』(32)は、イタリアのMondo Home Entertainmentから2003年にDVDが出ています。『男装』(35)も同レーベルからDVDが出ています。
http://mondohe.com/customer/search.php?regista=George%20Cukor
『男装』は、「編集室より」の「DVD&放映録画 鑑賞メモ1 「虎鮫島脱獄」のコメントにも書きましたが、北米ワーナーから5月29日発売の『Katharine Hepburn Signature Collection』DVD-BOX(6枚組)に収録。
キャサリン・ヘプバーンのデビュー作、ジョン・バリモア、ビリー・バーク共演の『愛の嗚咽』(32)のDVDはBBSの1491に書いたとおり、イタリアの01 Distributionから2005年に発売。
セルズニック製作、エドワード・H・グリフィス監督、『The Animal Kingdom』(32)のDVDは、Alpha Videoから2004年に出ています。キューカーは共同監督ですがノンクレジット。
ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』に基づく『孤児ダビド物語』(35)のDVDは、北米Warnerから2006年に発売。
ノーマ・シアラー、レスリー・ハワード主演の『ロミオとジュリエット』(36)のDVDは、ブラジルのClassiclineから出ています。
http://www.classicline.com.br/filmes/romeuejulieta/capa.htm
『ロミオとジュリエット』の北米盤DVDはWarnerから8月14日に出ます。同作は、『Shakespeare Collection』(5枚組)にも収録。他の収録作は、『ハムレット』2枚組特別盤(96。ケネス・ブラナー)、『真夏の夜の夢』(35。ウィリアム・ディターレ、マックス・ラインハルト)、『オセロ』(65。スチュアート・バージ)。
クラーク・ゲイブル主演の『男の世界』(34)は、北米Warnerから8月7日に発売される『Myrna Loy and William Powell Collection』に収録。他の収録作は、『悪夢』(34。ウィリアム・K・ハワード)、『結婚十字路』(37。リチャード・ソープ)、『I Love You Again』(40。W・S・ヴァン・ダイク)、『Love Crazy』(41。ジャック・コンウェイ)。
2007年05月23日 22:32