DVD&放映録画 鑑賞メモ4 「男の敵」ほか
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「男の敵」
アメリカ版のフォードコレクションBOXからまずはこれを。
いままで見る機会はいろいろあったはずが、はずかしながら見ていない作品。特典映像解説ではフォードを代表する大傑作だとほめちぎっているのですが、「虎鮫」「モホーク」と見た後で、そこまでは同調できず。本人も5年ごしかの念願の企画だったようですが、密告者が悩む一夜、という話が文学的で、ビクター・マクラグレンだけがものすごくて、いつものような助演者たちの輝きにかけるような気が。と書いて、彼が人をなぎ倒すとこや自ら階段から転がるところや、銃撃戦でやられた男が二階から落ちるところ、霧の夜の人影、バーでの大盤ぶるまい、アメリカ行きの客船へ女と行くことを夢想するシーン、ポケットに入れているくしゃくしゃの紙幣、などなどを思いだすうちにやっぱり素晴らしい映画に思えてきました。文学的な内容をいかに映画的に、見せるか、ここに
すべての勝負はあるのだ。それにしてもビクター・マクラグレンってすごいですねえ。彼への愛だな、これは。深作欣二も室田日出男でこんな映画をつくりたかったでしょうね。
画質はいいけど、フィルムの劣化が激しいようで、複雑なデジタル修復まではやっていないようす。僕はこれでも全然いいです。基本的な画質はちゃんとしていて5作品送料込みで6千円ぐらい、ですから。
このことだけなら映画ファンにとってはたまらなく「いい時代」と言えるのですが。
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「捜索者」
AVマニア(うちのおくさんが人前では誤解されるからそんないい方はやめろといいます)雑誌「HIVI」で丁寧な海外版レビューを続けている堀切氏も絶賛のブルーレイディスク版です。
ゲームは全くやらないのに職業上の要請もありプレステ3を買ってこの米国版をみたのですが、このブルーレイ上映でもいいので、次世代DVDなどと関係ない、すべての映画ファンに見るチャンスがあるべきものではないでしょうか。とにかくすごい色彩、鮮明感で、真性ビスタビジョンのネガにおさめられたもののすごさを、まざまざと感じさせてくれます。その画質に目を奪われて、内容に入って行けないほどです。家でこんな映像を寝っころがりながら見られるなんて、いいんだが、わるいんだか。どこかでデジタルシアター上映してほしいです。
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米国版はおそらく同じマスターからの普通のDVDも出てまして、それでも鮮明感は味わえます。いやらしいけどブルーレイはもっとすご・・・。でもこれの入っているフォード/ウェインBOXには「捜索者」の昔の漫画本やパブリシティ資料集など紙ものも充実。
このなかの他から1本見ました。
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「果てしなき航路」
何故か「男の敵」よりもデジタル修復がほどこされ、すごくきれいです。ただ、この男ばかりのほとんど船上ワンセット・ドラマはちょっとしんどいです。男たちの顔ぶれは見事なのですが。映画は女優だとおもっているものとしては黒澤映画同様のしんどさがあるのです。グレック・トーランドの撮影をほめているコメントも「all cinema」にありましたが・・・見方がいいかげんなのか、やっぱり台詞がわからないとだめなのか。この作品の素晴らしさを教えて下さるかたはいらっしゃいませんか。

Faux
『男の敵』(35)は欧米(?)では「名作」ということになっていますが、半世紀を経て30年代フォードを再発見した日本人にとって、やや大仰で時代錯誤に見えるのでは。三百人劇場のRKO特集で観て以来未見なのですが。豪快な野蛮人ぶりが持ち味のヴィクター・マクラグレンも、この作品だと演技過剰だったような印象が。今観ても面白いのは、むしろ『周遊する蒸気船』(35)でしょう。これは確かFCの「ジョン・フォード特集」で観ましたが、90年代の三百人劇場での特集の時は観ていません。最近、シネマ・ヴェーラ渋谷のフォックス特集でやってましたが。
字幕ないとキツいですが、『The Plough and the Stars』(36)も、前衛的な構図やハイコントラストの照明はすごいのですが、ハナシがピンと来ません。アイルランドの過激派による革命ものということで戦前の日本では公開不可能だったようなのですが、未だに日本未公開。バーバラ・スタンウィックがなんか地味だったような印象が。原作はアイリッシュの革命家から作家へ転じたショーン・オケイシーの戯曲。
鈴木良平『アイルランド建国の英雄たち-1916年の復活祭蜂起を中心に』(彩流社)参照。
http://www.sairyusha.com/archive/2003/07/post_249.html
こんなリストも。
http://www.sunlifes.com/library/list/ta_28.htm
ちなみにヒッチコックの『ジュノーと孔雀』(30)の原作もオケイシー。サミュエル・ベケットも推薦したとのこと。『ジュノーと孔雀』はアイリッシュのバリー・フィッツジェラルド主演。彼は『The Plough and the Stars』にも出演。『The Plough and the Stars』にはフィッツジェラルドの実弟アーサー・シールズ(助監督も兼ねてます)も出演。
『ジュノー』には、『わが谷は緑なりき』(41)や『ルービッチュの小間使』のセイラ・オールグッドも出ています。彼女もダブリンの生まれ。
『The Plough and the Stars』には、『ルービッチュの小間使』(46)の薬屋の言葉を発さないお母さん役ウナ・オコナーも出てます。彼女はジョン・クロムウェル監督のウェルメイドなセルズニック映画『小公子』(36)にも出ています。彼女はベルファストの生まれ。
『果てなき船路』(40)は、「リュミエール・シネマテーク」の特集上映で、シネセゾン渋谷のレイトで観て、その後一度ビデオで観ました。ともかく暗い映画。
原作のユージーン・オニールの海洋もの戯曲群はよく知りません。ところで溝口健二の日活向島時代の最高作ともいわれる『霧の港』(23)はオニールの戯曲が原作とのことですが(佐藤忠男『溝口健二の世界』(平凡社ライブラリー)やIMDbによると『アンナ・クリスティ』)、別冊太陽『映画監督溝口健二』の登川直樹によると「あらすじから察すると一幕ものの「カーディフさして東へ」あたりの翻案であるかと思われる」とのこと。『カーディフさして』って、『果てなき船路』の元ネタの一本なのですが(他は『In the Zone』『長い帰りの船路 The Long Voyage Home』、『The Moon of the Caribbes』)。
蓮実重彦+山田宏一の『傷だらけの映画史』(中公文庫)で『果てなき船路』の魅力が語られていますが、蓮実先生でさえ「でも、実は告白しますとね、ぼくは長い間、『果てなき船路』の良さがわからなかったんです。それで、今回、何度も見直しているうちに、初めてわかったって気がしました」と述べているくらいです。
この対談でも指摘されているように、これまたバリー・フィッツジェラルドとアーサー・シールズの兄弟が出演。撮影は『市民ケーン』(41)のグレッグ・トーランドで、ハリウッド映画としてはあきらかに異色ですが、オーソン・ウェルズが、フォードの『駅馬車』(39)を分析して映画演出術を学んだのはあまりに有名。IMDbのユーザー・コメントも参照。
http://www.imdb.com/title/tt0032728/
『果てなき船路』は、独立系プロデューサー、ウォルター・ウェインジャーの製作。紀伊國屋書店版(情報量の増えた新字幕)の『海外特派員』(40)の解説でも触れてますが、『海外特派員』ラストの参戦プロパガンダ演説の撮影時、たまたまセットを訪れたフォードが、ジョエル・マクリーに演説についての助言をしたそうです。
『海外特派員』は長らく日本未公開で70年代にIPにより公開されましたが、「リュミエール・シネマテーク」にも入ってました。『傷だらけの映画史』も参照。
2007年05月01日 22:24